関西ペイントの「アレスダイナミックTOP」とは
外装のリフォームを検討される際に「アレスダイナミックTOP」という塗料を目にし、関心をお持ちの方は多いのではないでしょうか。その際下記のような疑問点がよく上がるようです。
・どのような特徴があるのか?
・費用はどのくらいかかるのか?
・他にはおすすめの塗料はないのか?
今回の記事では、上記の疑問への答えも含めて、「アレスダイナミックTOP」という塗料の説明をしていきます。
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1.「アレスダイナミックTOP」とは
●基本情報
「アレスダイナミックTOP」とは、「関西ペイント」が製造販売する、外壁用塗料です。
近年人気の出てきた「ラジカル制御型塗料」の一種で、同型塗料としてはやや後発の2016年に発売されました。
製品名 | アレスダイナミックTOP |
---|---|
分類 | 水性反応硬化型ハルスハイリッチシリコン樹脂塗料 |
実勢価格 | 2,600円/㎡ |
期待耐用年数 | 15年 |
塗装方法 | ハケ・ローラー |
標準色 | 35色 |
希釈 | 上水(3~5%) |
ホルムアルデヒド放散等級 | F☆☆☆☆ |
適用下地 | コンクリート、モルタル、窯業系サイディングボード、ALC、各種旧塗膜 |
標準塗坪 | 0.12~0.12㎡/kg 1.8~2.1㎡/缶 |
●「ラジカル制御」とは
ラジカル制御とは、紫外線による塗膜の劣化をおさえる機能のことです。
そもそも「ラジカル」とは、乾燥したあとの塗料内に含まれる樹脂に触れることで塗膜の劣化を引き起こす物質です。このラジカルは、塗膜内の顔料に含まれる「酸化チタン」が紫外線に当たることで増加します。
そこで、酸化チタン自体を膜で覆って紫外線を受けにくくすることで、ラジカルの発生を抑える方式が考案されました。この仕組みを「ラジカル制御」と呼びます。
通常、塗料の耐用年数に影響するのは使用している樹脂の種類ですが、「アレスダイナミックTOP」は、ラジカル制御のはたらきにより、同じシリコン樹脂を使用した汎用塗料に比べて、その耐用年数が長くなるとされています。
「アレスダイナミックTOP」と汎用塗料の比較
樹脂・商品 | 耐久年数(外壁用) | 実勢価格(/㎡) | 特徴 |
---|---|---|---|
アクリル | 5~7年 | 1,400円~1,600円 | 最安価。 住宅にはほぼ使われない |
ウレタン | 7~10年 | 1,700円~2,200円 | 価格が安いがやや低耐久 |
シリコン | 8~13年 | 2,200円~3,000円 | 最も頻繁に使われる |
アレスダイナミックTOP | 約15年 | 約2,600円 | シリコンと同価格帯で高耐久 |
フッ素 | 15年~20年 | 3,800円~4,800円 | 高耐久だが価格が高い |
2.「アレスダイナミックTOP」の種類と使い分け
「アレスダイナミックTOP」シリーズには、外壁用塗料が5種類、屋根用塗料が3種類、それらと組み合わせて使う下塗り材が6種類あります。
さらに、アレスダイナミックTOP独自の特徴として、「ダイナミック強化剤」の存在があります。上塗材と強化剤を混ぜることで、雨天後のまだ湿っている面への塗装が可能になり、梅雨時期でも塗装のスケジュールが崩れにくくなるメリットがあります。
外壁塗装には、「上塗材」のうち外壁用のものから1製品、「下塗材」から1製品、あとは必要に応じて「強化剤」を組み合わせて使います。
製品と使い分けの一覧は以下のとおりです。
種別 | 製品名 | 使い分け |
---|---|---|
上塗材 | アレスダイナミックTOP | 外壁用。水性。耐用年数15年。最もスタンダードな製品 |
アレスダイナミックTOPマイルド | 外壁用。油性。耐用年数15年。鉄部にも塗装可 | |
アレスダイナミックMUKI | 外壁用。水性無機塗料。耐用年数15年以上。高級品 | |
アレスダイナミックMUKIマイルド | 外壁用。油性無機塗料。耐用年数15年以上。高級品 | |
アレスダイナミックノキエ | 軒天専用。虫除け機能などが付加 | |
アレスダイナミックルーフ | 屋根用。油性。 | |
アレスダイナミックルーフMUKI | 屋根用。油性無機塗料。フッ素塗料より長耐久 | |
アレスダイナミックルーフアクア | 屋根用。水性シリコン塗料 | |
下塗材 | アレスダイナミックフィラー | 主にサイディングボード用 |
アレスダイナミック防水フィラー | 高層階の下塗り向き | |
アレスダイナミックプラサフ | 傷やひび割れのある面向き。微弾性あり | |
アレスダイナミックシーラーアクア | 水性。オールマイティーに使用可 | |
アレスダイナミックプライマー | 鉄部用。防錆効果あり | |
アレスダイナミックシーラーマイルド | 主に無機系・光触媒系コーティング面用 | |
強化剤 | ダイナミック強化剤 | 湿潤面への塗装を可能に。 アレスダイナミックTOPと混ぜて使用 |
3.メリット・デメリットについて
●メリット
①耐用年数が長い
もともと汎用塗料より耐用年数が長いラジカル制御型塗料ですが、「アレスダイナミックTOP」はそのなかでも最長の「約15年」という耐用年数(期待値)をもちます。
汎用シリコン塗料と比べて2~5年、他のラジカル塗料と比べても1~3年長い数値です。
②「チョーキング」が起こりづらい
前述の「ラジカル」が引き起こす主な劣化現象は「チョーキング(白亜化)」です。
「アレスダイナミックTOP」の使用により、ラジカル制御の効果でチョーキングの発生をおさえることが期待できます。
チョーキングとは、年月が経った塗膜の表面が粉末化することです。チョーキングが起こると、見た目や安全性が下がるだけでなく、絵や衣服が触れてしまった場合に汚れてしまうこともあります。
③雨天でも作業が可能
「アレスダイナミックTOP」に付属の強化剤のはたらきにより、雨天でも塗装作業が可能となります。これにより、天気による施工スケジュールのズレが起こりづらくなります。
④安全、低刺激
水性塗料であることのメリットとして、「VOC」(揮発性有機化合物)の含有率が少ないことが挙げられます。これにより、施工中のシンナー臭や、目鼻への刺激が溶剤系(油性)塗料に比べ低く抑えられます。
●デメリット
①耐用実績がまだ少ない
アレスダイナミックTOPの耐用年数は「約15年」と設定されていますが、発売してからまだ6年弱しか経過しておらず、実際の環境で確かめられた数値ではありません。
本塗料をはじめとしたラジカル制御型塗料は、いずれもまだ実際の自然環境・住宅環境では「経過観察中」と言える段階です。
ただし、「約15年」の根拠は、メーカーが実施している実験結果です。紫外線を多く放出するランプを置いた実験室で、耐用年数がすでに確かめられた従来製品との塗膜の劣化速度を比較したデータがもとになっています。この耐候性促進実験は、塗料の耐用年数の算出にごく一般的に用いられているもので、決して根拠として疑問があるものではありません。
②初期費用が他のラジカル塗料より高め
ラジカル制御型塗料の中では、塗料代(≒初期費用)が高めの製品です。
耐用年数の期待値は高いので、トータルコストで見ると平均~安めの価格になります。
「アレスダイナミックTOP」とラジカル塗料他2製品 比較
商品名 | アレスダイナミックTOP | プレミアムシリコン | パーフェクトトップ |
---|---|---|---|
メーカー 関西ペイント | エスケー化研 | 日本ペイント | |
発売 | 2016年 | 2015年 | 2012年 |
樹脂 | 水性シリコン | 水性シリコン | 水性アクリル |
耐用年数(公称) | 約15年 | 13~16年 | 11~14年 |
実勢価格(/㎡) | 約2,600円 | 約2,400円 | 約2,400円 |
特徴 | 最長耐用(期待値) 雨天で施行可 |
トータルコストが安い | 再先発商品 光沢の種類が多い |
③「白色」か「淡色系」でないとラジカル塗料の効果が薄い
「ラジカル制御型」塗料の効果は、白色やそれに近い薄い色ほど強く発揮されます。
劣化物質「ラジカル」の発生原因である「酸化チタン」は、白色系の塗料に多く使われる顔料(着色)成分です。
そのため、「酸化チタン」の含有量が少ない原色系や濃色系のカラーでは、もともとラジカルの発生量が少ないため、「ラジカル制御型」塗料を選ぶメリットがさほどなくなります。
④光沢「なし」のカラーでは雨天の施工不可
アレスダイナミックTOPの光沢の選択肢は、「ツヤあり」「7分ツヤ」「5分ツヤ」「3分ツヤ」「ツヤなし」の5種類です。
このうち「ツヤなし」は、アレスダイナミックTOPとセットの「ダイナミック強化剤」の使用ができません。 強化剤が使用できないと、アレスダイナミックTOPの大きな特徴である雨天時の塗装作業ができるメリットがなくなります。
4.他の塗料の比較
「アレスダイナミックTOP」は、期待耐用年数の非常に長い塗料です。
以下は、外壁の面積を200㎡、期間を30年間と仮定した場合の塗料代(初期費用)やトータルコストのシミュレーションになります。
・「汎用シリコン」塗料との比較
アレスダイナミックTOP | 汎用シリコン塗料 | |
---|---|---|
実勢価格(/㎡) | 2,600円 | 2,200~3,000円 |
初期費用 (例:実勢価格*200㎡) |
520,000円 | 440,000~600,000円 |
耐用年数 | 約15年 | 8~13年 |
30年間で発生する 塗り替え回数 |
約2回 | 約2.3~3.75回 |
トータルコスト (初期費用×工事回数) |
約104万円 | 約101.2万~225万円 |
「アレスダイナミックTOP」のほうが初期費用は高額です。しかし耐用年数が長いため、トータルコストではシリコン塗料の一番安い場合と変わらなくなります。
そして耐用年数が長いぶん、次回のリフォーム工事をより先延ばしでき、工事回数の差でさらに安く済みます。
・「他のラジカル制御型」塗料との比較
アレスダイナミックTOP | パーフェクトトップ | プレミアムシリコン | |
---|---|---|---|
メーカー価格(/㎡) | 3,300円~ | 2,930円~ | 2,750円~ |
実勢価格(/㎡) | 2,600円 | 2,400円 | 2,400円 |
初期費用 (例:実勢価格×200㎡) |
520,000円 | 480,000円 | 480,000円 |
耐用年数 | 約15年 | 11~14年 | 13~16年 |
30年間で発生する 塗り替え回数 |
約2回 | 約2.1~2.7回 | 約1.8~2.3回 |
トータルコスト (初期費用×工事回数) |
約104万円 | 約100.8万~130万円 | 約86.4万~110.4万円 |
塗料の特徴 | 雨天時の施工が可 | 香りつきモデル有 | コストが優秀 |
もっとも初期費用が高いのは「アレスダイナミックTOP」ですが、トータルコストでは3つのなかでは中間になります。
・「汎用フッ素」塗料との比較
アレスダイナミックTOP | 汎用フッ素塗料 | |
---|---|---|
実勢価格(/㎡) | 2,600円 | 3,800~4,800円 |
初期費用 (例:実勢価格*200㎡) |
520,000円 | 760,000~960,000円 |
耐用年数 | 約15年 | 15~20年 |
30年間で発生する 塗り替え回数 |
約2回 | 約1.5~2回 |
トータルコスト (初期費用×工事回数) |
約104万円 | 約114万~192万円 |
耐用年数の下限は同等です。初期費用・トータルコストともに「アレスダイナミックTOP」使用の場合のほうが安くなります。 シリコン塗料を選ぶ場合は、前述の「耐用年数が経過していない」ことへの不安など、実績を重視する場合でしょう。
5.まとめ
「アレスダイナミックTOP」は、他のラジカル塗料、汎用塗料のどちらと比べても、高いコストパフォーマンスが期待できる塗料です。
初期費用・トータルコストこそ、同じラジカル制御型塗料の「プレミアムシリコン」に一歩譲りますが、
・耐用年数の期待値
・施工スケジュールの遵守(雨天でも塗装可のため)
を重視する場合には、「アレスダイナミックTOP」のほうがオススメです。
発売後、公称の耐用年数はまだ経過していませんが、外壁塗料で費用・機能ともに優秀な塗料であると言えます。