外壁塗装の契約書のチェックポイント
外壁塗装工事を検討する際、塗装業者選びの重要なポイントの一つが「きちんとした契約書を作成してくれるか」です。
この記事では、契約書のチェックポイントについてご紹介します。
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契約書は消費者を外壁塗装工事のトラブルから守るツール!
1.外壁塗装工事における契約書の役割とは?
契約書をきちんと取り交わせば、工事にまつわるトラブルを回避できる可能性は高くなります。まずは、外壁塗装工事における契約書の役割を確認しましょう。
・塗装業者と消費者の合意に法的な根拠を与える
「どんな内容の工事を、いつまでにやります」という、塗装業者と消費者の合意を法的なものにするのが契約書です。
塗装業者は契約書どおりの内容で工事を行う責任が明確になり、契約書に書かれた内容の工事を行わなければ法律違反を犯したことになります。
・万が一の事故やトラブル発生時の対処法の明記が解決を容易にする
なにごともなく工事が終わるのが望ましいのはもちろんですが、想定外の事故やトラブルが発生し、契約書の内容どおりに工事が行えないケースもあります。
万が一の場合、塗装業者がどのような対応を取るか契約書に明記してあれば、解決までのやり取りがスムーズです。
・口約束や「やってもらえると思っていた」などの思い込みによるトラブルを防ぐ
契約書がない場合、塗装業者に悪意がなくてもお客様とトラブルになる可能性があります。「口頭でお願いし、『わかりました』と業者が言っていたはずなのに、工事完了後に『そんな約束はしていない』と言われてしまった」「当然やってもらえると思っていた雨戸の塗装が、工事の対象外と言われてしまった」などのトラブルは、契約書を交わしていれば防げたはずなのです。
・悪徳業者との契約を防ぐ
良心的な外壁塗装業者は、お客様の立場に立って工事をするものです。そのためには、きちんと契約書を作成し、お客様に分かりやすく説明をしています。
お客様を守る大切な契約書に関することでいい加減な対応をする業者は、『よい業者』とはいえません。
契約書がないとどうなる?
では、もしも契約書を作成しなかったり、不十分な内容の契約書を作成したりした場合、どのようなことが起こるのでしょうか?
・業者との「行き違い」や「言った・言わない」のトラブルが発生する
正式な文書が残っていないので、当然やってもらえるとお客様が考えていた部分の塗装が対象外であったり、当初の予定よりも工事完了予定が大幅に延びても我慢するしかなくなったりします。
行き違いは、業者に悪意がなくても起こる可能性があるので、契約書を作成することは重要です。
・トラブルの解決に時間がかかる
想定外のトラブルが起こっても、どのように対処するか決まっていないために、裁判所で争うこともありえます。お客様側が勝訴したとしても、裁判にかかる日にちや費用は大きな負担となるのです。
契約書に関するトラブルの実例
以下は、公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターに寄せられた、消費者の相談内容です。
【相談内容】
「築40年の木造2階建て住宅を大規模リフォームするにあたり、近隣のリフォーム会社に依頼。口頭で1300万円の契約をし、前金で1000万円を支払った。しかし工事の進捗が遅い上、追加費用としてさらに1000万円を請求された。(相談ID:611)」
お客様との打ち合わせ内容を記録に残さず、見積もり書や契約書を提出しない塗装業者には、明らかな非があります。しかし、お客様が納得いくような解決策を、すぐに塗装業者に取らせる方法はないでしょう。
専門家はこの相談者に対し、
「相談者側としても、ただ不安に思っているだけでなく、今からでも契約書や見積書を提出してもらい、その内容について説明を求め、意見交換をする必要があると思われます。」
と回答しています。
つまり、すでに信用できなくなっている塗装業者と打ち合わせを重ね、善処を求めていくには手間と時間がかかるのです。素人には難しいと弁護士に依頼すれば、さらに費用がかかることになります。
この相談事例のように契約書に不備があった場合、最終的に解決したとしても、お客様の被害は大きなものになってしまうのです。
※引用:公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター 住まいるダイヤル相談事例より抜粋
外壁塗装の正しい契約書と契約書のチェックポイント
この章では、下記の2点について説明します。
・塗装業者とのトラブルを避け、万が一のトラブルや引き渡し後の不具合があった場合にも安心な契約書はどのようなものか
・外壁塗装の契約書を受け取る際に注意すべきチェックポイント
1.外壁塗装の契約書と必要書類
塗装業者にきちんと工事を行わせる効力があり、お客様の利益を守る契約書は、記載内容や書式がある程度決まっています。
塗装業者と外壁塗装工事の契約を結ぶ際には、以下の書類がそろっていることを確認しましょう。
・工事請負契約書
契約書の本体ともいえる、最も重要な書類が工事請負契約書です。お客様が工事を発注し、業者が工事の発注を引き受けたという証拠になる文書です。
工事請負契約書には、以下の項目が必ず記載されていなければなりません。
工事内容
工事の金額
工事着手の時期と工事完成の時期
工事の代金を支払う時期と支払い方法
契約書に添付する書類の種類
業者名と住所
お客様の名前と住所
・請負契約約款(うけおいけいやくやっかん)
工事の代金や期日が決まったからもう安心、と思える人はいないでしょう。「もしも期日までに工事が終わらなかった時はどうするのか」 「引き渡し後に不具合が見つかった時はどうするのか」など、工事に関する細かな取り決めを記載してあるのが請負契約約款です。
難しい法律用語が細かい文字で書かれているので、読むのに苦労するかもしれません。しかし、万が一の時の保証や違約金、クーリングオフについてなど、約款には重要なことが記載されています。
請負契約約款には必ず目を通し、おかしな点やわかりづらい点があれば、納得できるまで業者に質問しましょう。
・請負代金内訳書
見積もり書とほぼ同じで、工事請負契約書に記載された金額の詳細を示します。
・請求書
工事請負契約書に記載された代金の請求書です。
・保証書
保証書には以下の2点があります。
>外壁塗装業者自身が工事内容を保証する自社保証
>業者が加盟する団体や組合による第三者保証
2.外壁塗装工事における契約書のチェックポイント
・工事名、工事場所が正確に記載されている
当たり前のことですが、契約の基本となる事項です。
・支払日と支払い金額が明記されている
これまでに受け取った見積もり書と金額が異なっていないか、支払期日はいつか、を確認します。
業者の中には、“前金”として一部を前払いする方式を採用している場合もあります。一部前払いの全てが悪いわけではありませんが、工事が完了する前に半額以上支払うような条件には注意が必要です。代金を受け取っても工事を始めない詐欺まがいの事例があるだけでなく、工事の内容に不満があった場合、先に支払った代金を返還させるのは困難なケースもあるからです。
また、100万円を超えることも多い外壁塗装工事では、総額の30%程度の前金でも安い金額ではなく、詐欺に遭ってしまった場合の損失も大きくなります。お客様の立場に立って考えれば、工事が契約通りに行われてから支払うのが一番いいのはいうまでもありません。
・業者名と住所が正しく記載されている
A社と契約するつもりでいたのに、契約書の業者名はB社だったというケースでは、架空の業者名で契約して前払い金を着服する詐欺の可能性もあります。
・契約日、工事開始日、工事完了日が契約書に明記されている。各日付に遅延した場合の違約金について、約款に記載がある
工事の開始や完了の日付が契約書に明記されていれば、正当な理由がなく工事が行われなかったり工期が大幅に遅延したりした場合に、違約金を請求することができます。
昨今の建設業界は深刻な人手不足といわれています。人手不足などが原因の工事遅延を防ぐためにも、工事が遅延した場合の違約金支払いについて明確にしておく重要性が高まっています。
契約書に記載がない場合、工事が遅延したことでこうむった不利益を塗装業者に主張し、折り合いがつかない場合、裁判を起こさなければならないことも想定されます。
・保証期間について明記されている
口頭ではなく、正式な書面で保証内容を確認しましょう。保証期間は長ければ長いほど良さそうに思われますが、塗装に使う塗料は種類ごとに想定される耐用年数があります。
耐用年数が5年前後の塗料で10年の保証がついていたら要注意です。
・瑕疵(かし)担保責任について記載されている
難しい言葉ですが、わかりやすくいえば、「もし工事に不備があった場合にどうするか」ということです。
万が一の時の対応を契約書に盛り込むことで、法的な拘束力のある約束とすることができます。
工事の不備や不具合で、近隣の方など第三者に被害が及ぶこともあります。その場合の保証について記載があるかどうかも確認しましょう。
・契約金額の根拠となる見積もり書が正しく作成されている
契約書に記載されている金額の根拠となる見積もり書がいい加減では、後から追加工事が発生するなどのトラブルが予想されます。
塗装面積が不当に広く設定されているケースもありますので、見積もり書が正しく作成されていることが重要です。
・一括請負、一括委任の禁止が明記されている
標準的な契約書には、お客様の許可なく下請け業者に工事を丸投げすることを禁止することが明記されています。契約書にこの記載があれば、信用して契約したのとは異なる業者が工事をしていてがっかり、ということが防げます。
3.契約書をかわす際の注意事項
契約書そのもの以外にも、契約書を交わす際に注意していただきたい点をご紹介します。
・自宅で契約しない
契約書に記載された住所も業者名も架空のものだった、という詐欺に引っかからないためにも、面倒でも塗装業者の事務所に出向いて契約することをおすすめします。
・打ち合わせ内容は全て書類にする
契約の基礎ともなる塗装業者との打ち合わせ内容は、全て文書化することをおすすめします。さらに後からごまかされることがないよう、複写式のカーボン用紙を使うことも重要です。
塗装工事でとくにトラブルになりやすいのが、塗装箇所や塗料の色に関する問題です。
塗装して欲しい部分
塗料の性能や種類
塗料の色
など、重要なポイントを書面化しておくことで、塗装業者とお客様双方の行き違いや「言った・言わない」のトラブルを防ぐことができます。
・契約を急ぐ塗装業者は要注意!
「工事費用が安くなるキャンペーンが○日までです」などと言い、契約を急がせる塗装業者には注意しましょう。高額な外壁塗装工事ですから、複数の業者から相見積もりを取って十分に検討し、納得してから発注するのが原則です。
契約を急がせる塗装業者は、お客様の立場に立って考えていないといわざるをえません。
・契約の前に現地調査を行っている
契約の前提となる見積もり書を作成するにあたり、現地調査はていねいにやっていたでしょうか?
現地調査がいい加減だと、後から不具合が見つかって追加工事が発生するおそれがあります。
・外壁塗装中、家主が留守でも作業報告をしてくれるか確認する
契約書に記載されたとおりの工事が確実に行われているかどうかは、毎日の作業報告で確認することになります。
お客様が不在の場合に何も報告してこない業者では、中塗り作業を省略されても気づかない、などということも起こり得るので要注意です。
クーリングオフについて
外壁塗装を含む住宅のリフォーム工事では、訪問販売によるトラブルが多発しています。
「無料点検といって訪問してきた業者に『すぐに工事をしないと危険』といわれて契約してしまったが、解約したい」
「高齢の両親が、訪問業者と相場より高額な工事の契約をしてしまったので解約したい」
このような場合、お客様を守ってくれる制度がクーリングオフです。
クーリングオフとは、一定の条件や期間内であれば契約を撤回し、解除できる制度です。
もしもトラブルが起こったら…連絡すべき第三者機関
契約書があれば、外壁塗装トラブルの多くは未然に防ぐことができます。しかし、契約書があっても100%トラブルが起こらないとはいえません。
業者とのトラブルが発生してしまった場合、紛争処理の素人であるお客様の立場に立って相談に乗ってもらえる第三者機関を頼る方法もあります。
まとめ
信頼できる契約書とはどのようなものか、業者から契約書をもらった時にチェックすべきポイントなどをご紹介しました。
体裁も内容も難しそうに見える契約書ですが、外壁塗装工事のトラブルを未然に防ぐ大切な書類です。良心的な外壁塗装業者であれば、契約書の作成や内容の説明を面倒がることはありません。
心配なことや分からない点があったらとことん質問し、納得できる契約書を交わしましょう。